sensormaker’s diary

おもに、水質分析センサ関連と3Dプリンターでの製作についてつらつら書いていきます。

スマホで測れるpHメータ その3 最新機能 新開発 高速高効率ノイズフィルター

時間をすっ飛ばしまして、スマホで測れるpHメーターの最新機種と最新アプリで新しく開発した「高速高効率ノイズフィルター」についてご紹介いたします。

 

最新機種はこちらです。

pHAI Smart Simple(スマホとのセット)

センサは3種類

pHAI Next BKシリーズ

アプリの画面もとってもシンプルになりました。

測定アプリ「pHAISimple」

さて、新開発の「高速高効率ノイズフィルター」についてですが、開発に至った経緯は、次のようになります。

 

さるお客様から、中国製のOEMと思われるポータブルのpH計のセンサの具合がおかしいということで、お預かりして、調査をしました。

センサをみると、ほとんど、シールド処理していないにも関わらず、pH測定をしてみると非常に安定しています。通常なら、センサを手で触るだけで、静電ノイズが入って、

測定値が揺れるはずなんですけど・・・・。

これは、ソフトかハードでかなりのノイズ処理をいれているな~と思いました。

通常、ノイズ処理をきつくかけると時定数がかかったようになり、生の信号への追従性が悪くなり、応答も遅れます。

 

図で表すとこんな感じになります。

ノイズフィルターとして非常によく使われる移動平均法の例です。

緑の線が生信号でオレンジの線が移動平均後です。

移動平均10回の場合

移動平均50回の場合

移動平均回数を増やすと、曲線はなめらかになりますが、信号応答は遅れます。

また、ピークとピークの高さも訛ってきます。

 

じつは、私のところでも、開発当初のセンサであれば、ノイズ処理は軽くで済んでいたので、応答速度最短5秒という超高速応答は実現できていたのですが、
特に、特注でセンサを開発したときに、ガラス膜の抵抗値が大きくなるものがあり、
静電ノイズを受けることがあり、ノイズ処理を少し多めにかけるようにしました。

よって、応答にも影響があり、「応答速度最短5秒」を実現するには、測定条件

をある程度整えれば・・・・・というようになってきました(でも嘘ではありません

ので・・・・)。

 

こういうことがあり、アプリも全面的に書き換えたので、上のようなこともなんとかしたいなといろいろやっていたところ、8月のある日、ふと、あるアイデアが降りてきまして(降臨すると呼んでおります)、さっそく、プログラミングし、テストしてみると

バッチリの結果が得られました。

新方式は、ノイズ処理をきつくかけつつ、信号変化への追従性もよくし、より、
リアルな信号変化に対応するということが目標です。

 

テストとしては、pH4の標準液を測定後、急に、pH9標準液を測定するということを

行いました。

pH4とpH9の間は約320mVの電位差が発生します。pH0~14フルスケールが840mVくらいなので、約38%のかなり大きな信号変化となります。

これまでのノイズ処理との比較の動画がこれです。

 

 www.youtube.com

 

新開発のノイズフィルター(右側)では3回の表示変化(=3秒)で瞬時に安定領域に

遷移しています。

従来のノイズ処理(左側)は25回(=25秒)ほどかかっております。

圧倒的な改善結果が得られました。

グラフで示すと次のようになります。

ノイズ処理新旧比較

ちなみに、前述の中国製OEMとみられるpHメータと手持ちの国内トップクラスのメーカーのポータブルpHメータで同じテストを行ったところ、応答時間は倍以上かかり、
イラつくほど遅かったです。

これについては、またの機会にレポートしたいと考えております。